2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

成育

少子化の現在、子どもという獣のような生き物の育て方を、若い親たちが実際に見る機会も、減っている。本を読むだけでわかるわけでもない。 若くして二人の子を産み育てることになった花も、ひどく苦労した。オオカミの血を引く子どもは、人間の子と性質が違…

不穏なもの

長崎の離島で暮らす姉弟。弟が妻を迎えて数日後、姉の昔の恋人が帰郷し、復縁を迫る。高校教師を務める弟の教え子も、痴呆症の義父をかかえる妹夫婦も、秘めたものをかかえており、平穏に見える世界に波が立ち始める。 日常と幻想。記憶のずれ。 Pカンパニー…

りりこの世界

全身整形によって完璧な美をものにしたトップモデル、りりこ。崇めたてるメディアやファンだけでなく、彼女自身が、イメージの虚構性ともろさを知っている。 今日でも古びない岡崎京子のコミックを映像化した『ヘルタースケルター』(日本、蜷川実花)。派手…

書くことの本質

数十年にわたり賢愚とりまぜ腐るほどさまざまな文章を読み、また自分も大量の文章を書いた結果、僕は「書く」ということの本質は「読み手に対する敬意」に帰着するという結論に達しました。それは実戦的に言うと、「情理を尽くして語る」と言うことになりま…

一味違う青春

働くこともなく、火炎放射器や改造車づくりに精を出す二人の男。バイオレンス映画にあこがれ、女の裏切りに立腹しながらも、大した行動ができるわけでもない。女性関係のもつれから破滅していく。 『ベルフラワー』(米国、エヴァン・グローデル)は青春映画…

人間の居場所

椅子も家具もスピーカーも赤色。舞台中央の円部が、役者を載せたまま、始終回転する。 ハロルド・ピーター作の『温室』(深津篤史・演出、新国立劇場)は、強制収容所のような療養所で、女性患者の妊娠が発覚。犯人に仕立て上げられた職員が拷問に合う。 強…

手法の選択

若手を中心に研究合戦のスピードは止まらない。新手が出ては消え、戦法は日々変化する。「全部には対応できないので、ある種の適当さが要になる」。カギは取捨選択だ。「その戦術に将来性があるのか、自分のスタイルに合うのか、長期的な視点で考えるよう心…

記憶としての本

大人の本も子どもの本も本質は変わらないと思います。トルストイは「すぐれた芸術の3条件」として「新鮮」「誠実」「明快」を上げています。何度読んでも新しい発見がある。心に残って成長の糧になる。そして相手にわかりやすく伝わる。これは音楽にも美術に…

小説の誕生

「文学は人の心に入りながら、書物という形で距離を置く。書くことや読むことで、そのことに距離を置くことができ、さらに、ことの内部に入っていくことができ、また、距離が置ける。理性と心をわけるのではなく……というように、言いたいことをしゃべってい…

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