人間の居場所


 椅子も家具もスピーカーも赤色。舞台中央の円部が、役者を載せたまま、始終回転する。
 ハロルド・ピーター作の『温室』(深津篤史・演出、新国立劇場)は、強制収容所のような療養所で、女性患者の妊娠が発覚。犯人に仕立て上げられた職員が拷問に合う。
 強圧的な所長。言い寄る情婦。腹の内に秘め事を持つ職員たち。
 各々の思惑はわかりにくいが、理解しえない人物と、入り組んだ関係こそが、社会であり、政治なのだ。
 皮肉なタイトルこそが、人間の居場所である。 

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