2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

世界の不合理

映画プロデューサーを目指す新人アシスタントが活動する場面の大半は、オフィス内の事務作業だ。『アシスタント』(米国、キティ・グリーン)は、ハラスメントを働く会長の姿そのものは見せない。見て見ぬふりをする同僚や、もみ消しに加担する人事担当者が…

映像はスタイリッシュ

混血少年を筆頭に、妊婦やら異国人やら、多様なスパイダーマンが登場。アニメ『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』(米国、ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン)は、実写的なCGではなく、コミック調の…

平和のための哲学

けんかをしようが、万引きをしようが、体罰をくらわすわけでも、頭ごなしにしかりつけるわけでもない。哲学を専門とする好調の率いる北アイルランド、ベルファストの小学校では、宗教による争いから住民が対立しあった歴史の反省から、教師は、生徒たちと辛…

怪物のかかえる物語

母親も教師も子どもも、悪意はないのだが、味方によっては、迷惑者というモンスターに見えてしまう。『怪物』(日本、是枝裕和)は、ミステリアスに見えたそれぞれのエピソードが、常識的な人間ドラマに回収されてしまう展開が惜しまれるものの、各々が抱え…

家の事情

水道を止めるため、日夜、支払延滞者の家庭を訪ね歩く水道局員。金があるのに払わない市民もいるが、育児放棄をされて子どもだけで暮らす家もある。『渇水』(日本、高橋正弥)の局員は、妻子と別居中。延滞者の家庭に自身の今を重ね合わせていた。

財政の実態

消費税をはじめ、庶民に負担となる税金は増え続ける。給付金が一時的に出されたととしても、それを上回る課税が様々な名目で徴収される。社会保障や医療費はかさむ一方だが、恩恵のある層が、からくりを明かすことはない。 国の財政不安をあおり、長年、布教…

中高年シングル女性

住宅・仕事・社会保障……。座談会『透明にされた「中高年シングル女性」の困難』(『世界』5月号)では、大多数向けのセイフティーネットから外れた層の現実が語られている。少子化対策とやらで出産を期待された産める年代の人だけが支援対象なのか。自助努力…

ロックと政治

ニナ・ハーゲン、ベルベットアンダーグラウンド、デビッド=ボウイらと、チェコのハヴェル大統領、ドイツのメルケル首相が、歴史の転換点でどのようにかかわったか。『映像の世紀バタフライエフェクト ロックが壊した冷戦の壁』(NHK)は、「ベルリンの壁」…

清廉なる作家像

批判もあろうが、作家は新憲法のもと、不戦であることに徹した自国の戦後を、一見、欧米に寄り添うスタンスを見せつつ、世界に向けて訴えた。障害とされる生命体の中にも、純粋なる魂を見出したことも事実であろう。『大江健三郎 ノーベル賞の旅』(NHK)で…

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