2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

職業の意義

看護学校で学ぶ生徒は、人種も年齢も様々だ。実習先でもトラブルは尽きないが、カウンセラーが親身に悩みを聞いて助言する。『人生、ただいま修行中』(フランス、ニコラ・フィリベール)は、生徒たちの姿を通じて、あらゆる職業人の存在意義を再認識させる。

遺作の映像詩

29歳で命を絶ったフー・ボーの遺作『象は静かに眠っている』(中国)は、死の匂いと希望の灯が両立する。 同級生を死なせてしまった少年。母と仲違いする少女。娘夫婦に追い出された老人。家族に疎んじられる不良青年。居場所のない4人が、象のいる街に向か…

ゴッホの生命力

唯一無二の絵も、突然変異で現れたわけではない。『ゴッホ展』(上野の森美術館)では、「ハーグ派」「印象派」の双方を吸収しつつ、独自の画風を確立したフィンセント・ファン・ゴッホの変遷をたどる。短い命の中で大量に描かれた絵は、今日でも生命力を失…

人と獣

人と違う容貌と特殊能力を持つ獣人。『ボーダー 二つの世界』(スウェーデン・デンマーク、アリ・アッバシ)は、出生の秘密を知って自我が芽生える女職員を、リアルな特殊メイクで表現する。 人間と獣の境界線は何か。差異と共存というモチーフを踏まえた今…

救いなき地方都市

犯罪の疑いをかけられた青年や出戻りの男が村八分に遭う。被害者の親類を始め、村人の姿勢は、陰湿で狂信的だ。『楽園』(日本、瀬々敬久)は、追い詰められていく被疑者を殺された少女の友人だった少女の目で、見つめていく。この映画の地方都市に、救いを求…

名曲の継承

ビートルズの曲を知らない世代が増えた現代、『イエスタディ』(英国、ダニー・ボイル)の設定は、不自然ではない。大きな停電の後、ザ・ビートルズの痕跡が世界から消滅した。インターネットを検索しても、彼らを示す語句は一切出てこない。売れないミュー…

道化師の悲哀

『ジョーカー』(米国、トッド・フィリップス)は、サイドストーリーの位置づけをわきまえつつ、独立した物語である。コミックスならではの異様なキャラクターだが、この道化師に奇妙なリアリティーがあるのは、彼が犯罪者に至るまでが実に丁寧に描かれてい…

人生の現実

労働者階級の男女が出会って、結婚。初々しい日々が、年を重ねるにつれて辛辣な展開になる。最期は痛ましい姿で死ぬ。 『エセルとアーネスト ふたりの物語』(英国・ルクセンブルク、ロジャー・メインウッド)は、愛らしい絵の世界に浸るだけの物語ではない。

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