2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

理想の生きざま

酒と薬と女におぼれ、働くことなく人生を楽しむムーンドッグ。それでも彼は誰からも愛され、詩もすばらしい。『ビーチ・バム まじめに不真面目』(米国、ハーモニー・コリン)はひたすら破滅的で、ひたすら音楽的。それでも観る者を高揚させるのは、彼の生き…

歴史という詩

一族の歴史は、国家の歴史でもある。『ハイゼ家百年』(ドイツ・オーストリア、トーマス=ハイゼ)は、監督が自身の家族の日記や手紙、写真にナレーションを重ね、戦争から冷戦を経て、壁崩壊後に至る変遷を3時間半余りのモノクロ映像で映し出す。 歴史を俯…

ゆるい町

古本屋・古着屋・ライブハウス・喫茶店。『街の上で』(日本、今泉力哉)は、町に暮らす青年と女たちの微妙なかかわりを綴る。エピソードもセリフも、ひたすら日常的で、ひたすらゆるい。その心地よさが、舞台となった下北沢の味わいでもある。

山の教室

教員が村人に尊敬され、子どもたちから待ち望まれる世界。標高4800メートルの奥地にある村に赴任した教員が、夢も野心もある若者ではなく、人生の辛酸を味わった高齢者ならば、冬を迎えても、その地にとどまったろう。青年教師と子どもたちの触れ合いを綴っ…

平凡な作家

林真理子の『女文士』(新潮文庫)は、決して有名ではない作家・眞杉静枝の評伝である。どれだけスキャンダラスに語られようと、眞杉自身は、同時代の辛辣な作家と比べれば、さほど異常ではなく、むしろ平凡と言ってもよい。上昇志向もあり、実際に成功した…

コロナ脳からの離脱

インフルエンザとの差異や、国情を無視した過剰で的外れな政策と報道は、コロナの間接的被害と損失を増大させた。ウイルス学者・宮沢孝幸と漫画家・小林よしのりの対談『コロナ脳 日本人はデマに殺される』では、コロナ脳から離脱すべく、実状が明かされてい…

異世界の目

韓国人一家が米国の南部で畑づくりにいそしむ『ミナリ』(米国、リー・アイザック・チョン)。郷愁の漂いがちな白人移民の物語とは違う新鮮味がある。自国の歴史を異世界の人間に語らせると、思いがけない収穫があるものだ。

変愛の愉しみ

予備校では教え子の女子高生だが、恋愛に関しては講師への指南役。『まともじゃないのは君も一緒』(日本、前田弘二)は、一風変わった男女の恋愛喜劇だ。ウディ=アレンやエリック=ロメールを連想させる軽妙な展開はもちろん、二枚目でありながら、変わり…

アクセスカウンター