2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

家族の障害

父親を事故で失って以来、三人で暮らす家族。『ちづる』(日本、赤崎正和)の被写体は、監督の妹(知的障害と自閉症を持っている)だけではない。彼女の面倒を見る母親や、兄自身も、含まれている。 バランスを欠いた家族が自らを見つめ直し、新しい関係を構…

科学の善意

最先端の科学技術が投入され、職員が毅然として職務に取り組み、安全対策も万全を期している。巨大な施設は、穏やかな田園に囲まれ、外観も屋内も美術館のような美しさを保っている。 『アンダー・コントロール』(ドイツ、フォルカー・ザッテル)にナレーシ…

ウイルス被害

家畜が餌を口に入れ、人間は家畜を食べる。その間、ウイルスが混入すれば、影響は世界中に広がる。人は、あちこちに移動するからだ。 『コンテイジョン』(米国、スティーヴン・ソダーバーグ)では、医師やジャーナリストの思惑が、2次被害をも巻き起こす。…

リアルなばかばかしさ

我々の身辺には、長話の際に話題がずれていく者も、細かく考えすぎて話が進まない者も存在する。 計画的なのか、行き当たりばったりなのか、わけのわからないうちに、物事が決まったり、変化することもある。 五反田団の演劇『五反田の夜』(アトリエヘリコ…

アメリカン・ドリーム

メジャーリーグの選手ではなく、GMのビリー・ビーンを主役にして、人材補強のやり取りをメインに描く『マネーボール』(米国、ベネット・ミラー)。 ドラマチックになりうる場面でさえ、派手に誇張することはない。 それでいて、しみじみしたものが見る者…

幸福な家庭

お互いに親密。息子は善良だし、菜園も美しい。 『家庭の庭』(英国、マイク・リー)の老夫婦は、理想的な幸福を体現しているかのように見える。 ところが、彼らを慕って訪れるのは、孤独で、悩みの多い人間ばかり。 まるで、老夫婦が周りの幸せを吸い取って…

詩の運命

イラストと短編小説のコラボレーション、『遠い町から来た話』(ショーン・タン、岸本佐知子・訳、河出書房新社)。 誰にも読まれずに終わった詩の運命をたどる『遠くに降る雨』では、隠された詩が逃亡し、大きな固まりになり、宙に浮いて、突風でばらばらに…

表現の余地

演劇は、たとえば『リア王』に象徴されるように、普通の人が狂っていく過程を書くことにはすぐれた表現ですが、狂った人が狂ったことをしてもあまり面白くない。(平田オリザ『ソウル市民1939・恋愛二重奏』パンフレット) 結果ではなく、過程にこそ、表現の…

長編の創作法

米誌『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』でインタビューで、村上春樹が『1Q84』の素材について、明かしている。短編「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」をふくらませたものであり、出会った男女が別れて、お互いを探すと…

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