イラストと短編小説のコラボレーション、『遠い町から来た話』(ショーン・タン、岸本佐知子・訳、河出書房新社)。
誰にも読まれずに終わった詩の運命をたどる『遠くに降る雨』では、隠された詩が逃亡し、大きな固まりになり、宙に浮いて、突風でばらばらになる。
ある朝、人々は、そこら中に散らばったものを見つける。言葉と言葉がくっつきあってできた偶然の詩だ。読む人ごとに、違うことを語りかけるのだ。
みんなどうしてだかわからない。
なぜこんなにふわふわと浮かぶような気分なのか。
なぜそっとほほえんでしまうのか。
路面電車が来て、去っていたあとも、そのほほえみは、しばらく消えずに残る。(同書)