2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

映像美

陰惨な殺人が続発する一方、驚異的なまでに色彩豊かな画面。 セリフやストーリーに頼りきるのではなく、映像で見る者を引き込む『イノセント・ガーデン』(米国、パク・チャヌク)は、まさに映画だ。

孤立感

貧困が目立つのは、国全体が貧しいときではない。成長を遂げ、格差が生まれてから、初めて意識されるものだ。電気も施設も乏しく、殺風景な山地で家畜や畑仕事に精を出し、暗い室内で食事する家族に痛々しさを感じさせるのも、彼女たち自身が、もはや境遇が…

ファッショナブル

質素倹約。ニューヨークのストリート・ファッションを撮るためだけに、生き続けるフォトグラファー、ビル・カニンガム。80歳を超えてなお、自転車で疾走し、場所を移しては、人々の奇抜なファッションをカメラに収める。 シンプルな生活に徹するあまり、犠牲…

物語の原液

「そのままの現代語訳では伝わらない。当時の文献をリミックスして物語を作る。考え方はこれらと今回も同じ。今の人にわかるような構造になっていない過去の読み物は、まだまだいっぱいあります」(「京極夏彦、遠野物語に挑戦」『朝日新聞』8日夕刊) 物語…

想像のリアリズム

『アントニオ・ロペス展』(ザ・ミュージアム、文化村ザ・ミュージアム)の絵画は、最初のイメージを守りながら、何年も費やされて描かれている。 リアルでありながら創造的。 トイレであれ、町の風景であれ、絵の空白が、目に見えないものを想像させる。

ありえる

(引用者補:映画の『中学生円山』で)下井が『ありえない』と言った時、下井が『ありえることって何だ』と急に怒り出す場面があります。ありえない妄想をしていた子どもが、ありえないということを学んで大人になっていく、でも、ありえないことが起こるの…

誇りの犠牲

日本の統治以前、台湾では、狩猟地をめぐる部族間の争いが絶えなかった。 首狩りさえも行なわれたが、原住民同士ならば、お互いを壊滅させるほどには至らない。 日本軍との戦いは違う。原住民が抵抗を続ける限り、人も家も野山も、すべて失う覚悟が必要だっ…

恋愛と成長

昔の恋人と今の恋人。好きであることと、お互いの距離や出会いのタイミングが合致するとは限らない。 『グッバイ・ファーストラブ』(フランス、ミア・ハンセン・ラヴ)は、成長のきっかけを象徴するタイトル。 いつの時代にも通じる伝統的な恋愛劇だ。

写真のような

友人との再会。失踪者への思い。 『ペタルダンス』(日本、石川寛)は、最小限の設定と会話で、残されたものと失われたものを想像させる。 ただ画面を見ているだけでいい。 色調と構図によって一枚写真のように完成された映像が、見る者それぞれに、物語を育…

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