2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

甘え

母に逃げられ、夜になると泣き続ける父。家に引きこもって本を読み続ける娘。父娘の暮らす家にやってくる人間たちも、特異な感覚の持ち主だ。 劇団、本谷有希子の演劇『甘え』(青山円形劇場)は、感覚を理解させるのに説明的なセリフに頼りすぎており、劇の…

明るい老後

寿命が延びるのも、いいことばかりではない。体力も財力も衰えたなか、生きていくのには相当な苦労があろう。 『春との旅』(日本、小林政広)の老人は、足が不自由。世話役の孫娘が職探しで東京に行くことになり、居場所を求めて身内を訪ね歩くが、ことごと…

新しさ

乱歩賞の司会を務めた池井戸潤が、最終予選に残った作品のレベルを明かしている。 テレビドラマのパクリあり、既存作家の物まねあり、陳腐なトリック有り……。一般の人たちが思っているほど、新人賞に応募してくる作品のレベルは高くない。むしろ、低い。(日…

虚構

耳も聞こえず、口も利けない店主。経営するカフェ「沈黙亭」に、いわくありげな人間たちが集まる。 『沈黙亭のあかり』(俳優座、紀伊國屋ホール)のアフタートークで、作者の山田太一は、ドラマの面白さを出すために、日常そのものではなく、舞台ならではの…

謎と演出

孤島の精神病院で失踪事件が起こり、怪しげな人物ばかりが登場する。悪夢のような回想場面といい、『シャッターアイランド』(米国、マーティン・スコセッシ)の連邦保安官に訪れる試練は、ことごとく謎めいている。 大げさな展開の割に、明かされた謎には意…

中年の夢

『オーケストラ!』(フランス、ラデュ・ミヘイレアニュ)では、圧制で演奏家としての地位を追われた音楽家たちが30年ぶりに結集。夢のパリ公演を果たす。 実現までには紆余曲折があった。困難の克服には、人生の辛酸を知る中年ならではの知恵としたたかさが…

本能

任務は、一人で月に駐在し、採掘作業をすること。『月に囚われた男』(英国、ダンカン・ジョーンズ)の作業員は、自分がクローンであることに気付いてからも、地球への帰還をあきらめるわけではない。 クローンにも、人間の本能が継承されていたのだろう。

排斥

様相も習慣も異なる異人が近隣に出現したら、住人は拒否反応を示すものだ。異人を外国人や宗教信者に置き換えれば、排斥運動は、世界のどこでも実行されていることに気づくはずだ。 『第9地区』(米国、ニール・ブロムカンプ)で、エビ形のエイリアンを人間が…

革命

日本で革命に着手するならば、世間との折り合いをうまくつけないと、孤立して失敗することが目に見ている。日常を無理に遮断しようとすれば、60年代の運動の二の舞を踏むだろう。 青年団の『革命日記』(こまばアゴラ劇場)では、日常を引きずりながら運動を…

天皇性

「天皇性」(ママ)なんてものの正体は、女性が女性性が何であるか実感できないのと同じように、ぼんやりと“あるのかねー”な曖昧な概念そのものだ。それなのに「天皇らしさ」というものを背負い、それ故に生きがたさを露呈し続けている皇太子夫妻には、天皇…

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