虚構


 耳も聞こえず、口も利けない店主。経営するカフェ「沈黙亭」に、いわくありげな人間たちが集まる。
『沈黙亭のあかり』(俳優座紀伊國屋ホール)のアフタートークで、作者の山田太一は、ドラマの面白さを出すために、日常そのものではなく、舞台ならではの設定に工夫を凝らすという姿勢を語った。
 こんなことはありえないという虚構の場で、どれだけ真実に肉薄できるかに、作家の手腕が問われるのだ。
 劇のラストでは店主が口を利けるようになるが、喜んでばかりはいられない。沈黙亭では、これまでの名物が失われてしまい、新たな虚構が必要になったのだ。
 

 

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