科学の善意


 最先端の科学技術が投入され、職員が毅然として職務に取り組み、安全対策も万全を期している。巨大な施設は、穏やかな田園に囲まれ、外観も屋内も美術館のような美しさを保っている。
『アンダー・コントロール』(ドイツ、フォルカー・ザッテル)にナレーション抜きで映されるのは、ドイツの原子力発電所だ。
 すでに設備の全廃が決定されたものの、科学者たちには、疑問符が消えない。
 なぜ停止なのか? 
 原発には平和利用の理想を込めていた。悪意など持たなかった。
 科学の善意こそが、盲点となっている。チェルノブイリのような惨事にはならなかったが、何重もの制御システムを擁しても、蒸気漏れのようなトラブルは防げなかった。
 画面に映されるのは、廃棄物の膨大なタンク。膨大な時間と労力を処理に要する遺産が、すべてを物語っている。

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