不足の効用


 研究の意欲が生まれるのは、何かに同調したときだろうか。 

(他人の書いたものを読んで、「まったくその通りだ! 私も、前からそう思っていたのだよ」と思ったときには、そのことについて研究しようという気にはなりません)。……他の人の話を読んだり聞いたりして感じたこの「なんか足りない」「どこか違う」という感覚を時間をかけてていねいに観察してみてください。そこからオリジナルな研究が始まります。そこからしか始まりません。あらゆる科学的仮説は先行する理論ではうまく説明できない「反証事例」の発見から始まってかたちづくられるからです。(内田樹『狼少年のパラドクス―ウチダ式教育再生論』朝日新聞社

 不足は、発明の母である。

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