人生の花

 坂本長利の一人芝居の原作でも知られる『土佐源氏』は、宮本常一『忘れられた日本人』(岩波文庫)に収録されている。馬喰だった盲目の老人が語るのは、外れ者だった生い立ち故の数奇な生涯だが、魅力は極道者を自認する彼というよりも、かかわりのあった女たちであろう。男たちに比べて、自由に制約のある日常の中で見せる気遣い。身分の差にとらわれず人間を受け止める心のありようが、恵まれたとは言い難い老人の枯れた人生に、花を添えるのである。

                    f:id:mukuku:20210815153019j:plain

 

アクセスカウンター