ヨーロッパの英雄


 エロビデオとヨーグルト好き。せっかくの怪力もATMの強盗に使うだけというさえない男の孤独な日常物と思いきや、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(イタリア、ガブリエーレ・マイネッティ)は、後半からタイトルどおりのヒーローものに一変。燃え上がる車の中から子どもを救い、無差別テロ犯から、捨て身で爆弾を奪取する。
 彼をヒーローにしたのは、無垢な女だ。日本のヒーロー・アニメをバイブルのように信仰し、テロ犯の争いに巻き込まれて命を失った彼女に感化されて、男は正義に目覚めたのである。
 ヨーロッパの英雄譚は、アメコミとも日本のマンガとも異なる。テロに悩まされる地の現代のヒーローは、『罪と罰』ばりの転向を経て、聖なる意識を昇華させるのである。

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