絵画の題材になりそうな美しい田舎町に、建設会館を立てようと奔走する市長。反対する小学校の校長。市長の構想に異議を唱える作家。村人の言葉を聞き取るジャーナリスト。『木と市長と文化会館 または七つの偶然』(フランス、エリック・ロメール)は、彼らの議論をドキュメンタリータッチですくい上げる。
うらやましいのは、政治の会話が生活に根付いていることだ。雑談をするのと同様に自然な形で取り交わされ、なおかつお互いが遠慮なく意見を交わす。それぞれが一方的にまくし立てることはない。相手の言い分を最後まで聞いて、辛辣な批判にも笑顔で対処する余裕がある。
市長は、子どもの意見にも耳を傾ける。社交儀礼ではない。別の視点からの本質的な指摘に気付かされるのだ。
政策は、各々の思惑を超えた皮肉な結果に終わるが、この映画には、牧歌的な風景にふさわしい風通しのよさがある。