みずみずしい日々

  役所広司の演じる清掃員が巡回するトイレは、デザイン的におしゃれであり、汚物自体 を映すわけではない。疎遠だった親類との再会も、行きつけのバーの女将の男とも、激突はしない。道を外しそうな同僚も、職場から去ってしまう。

『PERFECT DAYS』(日本、ビム・ベンダース)は、猥雑さや欲望のうごめく世界とは、隔たりがある。禁欲的な生き方を成立させる設定だ。

  男は、持ち回りの場を丹念に掃除する。移動の車中で、昔のカセットテープを聞く。息抜きの時間に、木々の写真を撮る。仕事を終えると、なじみの酒場で酒を楽しむ。寝る前には、古い文庫本に目を通す。地味な日々でありながら、ときおり見せる笑みには、幸福感がある。

  異国の監督による視点により、映像もみずみずしい。

                                

 

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