監督の良心

 ナチ対策の原爆開発によってサスペンスドラマとして成り立つし、苦難を経ての成功物語に仕立てることもできたろう。だが、『オッペンハイマー』(米国、クリストファー・ノーラン)は、彼の英雄談議に終わらせていない。学者としての危うさや発明後の苦悩や方針転換という後半にこそ、力点がある。きのこ雲や被爆者をあえて映さず、米国側から感じられる恐怖を特撮で表現した。アイゼンシュタインとの対話もドラマの特性を生かしており、監督の良心が感じられる。

       

 

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