中高年の青春

 
 ポップミュージシャンとして日本の第一線で活躍した大江千里が、50歳近くになって渡米。無名のミュージシャンとしてニューヨークの学校で基礎から学んで、ジャズピアニストを目指す。
『9番目の音を探して』(KADOKAWA)は、大江自身が綴った謙虚な記録だ。アーティストにありがちなナルシズムもなければ、誇張癖もない。未知への挑戦と異分野での経験を融合させ、異質のジャズミュージシャンとして鮮やかに変身する。
 苦労しながらも環境に順応し、限られた後半生を無駄にしまいと励む姿勢が、すがすがしい。中高年の謙虚な青春である。
 

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