新境地の是非

 変わった人物に生活をかき回されたおかげで、新たな境地を迎えるという物語自体は、珍しいものではない。それでも、『ありがとう、トニ・エルドマン』(ドイツ・オーストリア、マーレン・アーデ)の父の奇行は、尋常なものではない。娘の仕事場にさえ、変装して出没し、あれこれ干渉するのである。
 その無遠慮さが、仕事人間だった娘の脱皮につながる。だが、父の変装を真似するようになる娘は、危うい境地にもいるのだ。

アクセスカウンター