地域俳優

mukuku2008-11-09

 この肉体は両親が作った。しかし、「私」という意識までは作ってくれなかった筈だ。その「私」という意識が出てくる「それ」を世話してやること。地域俳優がもしも現代演劇に欠かせない存在なのだとしたら、舞台で魂の世話をすることに習熟する俳優たちという立場しかない筈だ。
 ……劇作家は日々俳優と接していて、自分の中にある物語と俳優が持っているはずの物語を摺り合わせて一本の戯曲を書き上げる。
 そこに、余計な雑駁物を持ち込む必要などない。地域の俳優がリージョナブルな舞台で演じる時、必要なのは将来映画やテレビや首都圏の劇団で通用する気の利いた演技ではなく、自分に嘘をつかない、自分にとってリアルな演技である。(長谷川孝治――弘前劇場『いつか見る青い空』公演パンフ)

 万人向けのもっともらしい演技ではなく、自分にとってのリアリティーを追求した演技。地域俳優の演技は、グローバリズムに対抗できる唯一の表現手段である。

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