現代人

mukuku2008-11-05

『ICHI』(日本、曽利文彦)の主人公は女剣士の市。生い立ちはドラマとして平凡だ。不幸な女がたどる典型的な運命を忠実になぞるだけだからである。
 作品としては十分描けていないが、浪人・藤平十馬のほうが、印象的ではある。
 幼少の頃に自らの剣で誤って母を失明させて以来、真剣を抜くことができなくなった男。成人になってからは、剣術の指南役になるよりも、別の進路を選んだほうが賢明だったろう。そう選択しなかったのは、彼なりのこだわりがあったのかもしれない。
 不幸な進路が必然だった市。選択肢があるにもかかわらず、決して得にならない道を選んだ十馬。現代人の関心を引くのは、後者だろう。

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