そして現代へ

『すずめの戸締り』(日本)では、従来の新海誠の世界に見られた都会の美しさは影を潜めている。男女の運命的な出会いというテーマは維持しながらも、旧作では直接描かれなかった震災や脇役の活躍も比重を増している。平凡ながら愛着の持てる田舎町や通俗をいとわない筋立てに、監督の新境地が感じられる。

 ロードムービーとして、災害の閉じ師に連れ添って、九州から故郷の東北まで旅した女子高生は、母を失った幼女に対面するというクライマックスの後、訪れた地を再度、たどって、帰宅する。行くだけでなく、帰ってくる。古来から現代へとつなぐ物語である。

         

 

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