人間的な歌

 昼は採掘場でパワーショベルを運転。夜はステージで、バンド仲間と心の叫びを歌い上げる。党に利用され、秘密警察に仲間の監視を要請されたのは、東独の理想を信じたからだった。ゲアハルト・グンダーマンは、東西統合後にかつての活動を告白する。『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(ドイツ、アンドレアス・ドレーゼン)は、時間軸の交錯によって、伝説のミュージシャンの複雑な生涯を体感できる。

 グンダーマンは、現場の軽視や理念の押し付けを断固として、はねつける。感情に率直なあまり、妻との関係も、屈折している。

 監視社会にあっても、単純でないからこそ、人間的な魅力が維持された。彼の歌が聴衆の心をとらえたのは、自然な流れだった。

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