バランス

mukuku2007-11-28

 ドキュメンタリー作家の森達也は、大学時代、レコード会社に就職した先輩から1枚のデモテープを渡される。担当する新人バンド、サザンオールスターズの曲だった。

勝手にシンドバッド」は大ヒットしたけれど、あまりのインパクトの強さにコミックバンド的な認知が定着した時期があり、悩み続けた桑田は、軽いノイローゼ状態になったことを後に語っている。
 その後、サザンは「いとしのエリー」の大ヒットで、単なるコミックバンドではないことを証明する。でも悩み続けた桑田は、結局は路線を変えなかった。「夏をあきらめて」や「私はピアノ」、さらにはメガヒットとなった「TSUNAMI」など、これ以上ないほどに叙情的なラブ・ソングをリリースしながら、「女呼んでブギ」や「マンピーのG★SPOT」、「エロティカ・セブン」、「マリワナ伯爵」など、挑発的で人を食ったタイトルと歌詞の曲も発表し続けてきた。単なるヒットメーカーにとどまらず、過剰な毒とエロ、そして硬派なメッセージを、とても際どいバランスで曲に配置し続けてきた。(森達也『ぼくの歌・みんなの歌』講談社

 
 ファンが聴きたい曲と自分が手がけたい曲。両者の釣り合いをうまく取ることで、サザンは移り変わりの速い音楽業界で長く生き残ってきた。曲の幅の広さは、アーティストとしてのモチベーション維持にも役立っているのだろう。

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