弘前劇場の演劇には、飲食の場面が実に多い。ペットボトルの水を一気飲みしたり、餅を食べたりする。
『冬の入口』では、父の火葬の際、斎場の控え室で次男と隠し子が対面し、精進落としを食べる。中身は精進落としというよりもお弁当だ。しかも、父の好物である。
次男の俊勝が隠し子の京平に食事を勧める場面が、長谷川孝治の脚本には、こう書かれている。
俊勝 食べてください
京平 ええ
俊勝 とにかく一生懸命食べてください
京平 はい
二人、がっつくという形容がふさわしいほど、弁当をわしわし食べる。正確には、はじめは少し、やがて、わしわし
無造作に食べるのではない。様々な感情を味わいつつ、わしわしと食う。