現在、大学教授でもあるアニメーターの安彦良和は、国内アニメの現状をシビアに認識している。
よいものはほんの一握り。今のブームもロボットものなど商業アニメが作り出したいびつな面があるし、外国などに比べて決して優れていない。
勘違いしている学生がいたら気づかせてあげるのも務めの一つだと思う。(日経新聞7月13日夕刊)
実際、現場の発想には、いいかげんなところもあった。ガンダムについて、同紙で語っている。
「仮面を外すといい男」という設定で放っておいたシャアは、仮面を外したときの顔を作るのを忘れていたし、ハロも別の企画でボツになったキャラクターを流用した。ロボットが「合体する」とか「パーツが三つに分かれる」などの設定はスポンサーに取り入るためで、何の必然性もない。
アニメに限らず、創造の世界では、偶然やその場しのぎで作ったものが、後付けで高尚な意味があるかのように感じられることが少なくない。しかし、それが面白いところだ。偶然が必然に発展して誕生するのが名作なのである。
現場の見通しが暗くても、挑戦する若者が絶えないのは、表現のそんな魅力を知っているからかもしれない。