仕事

mukuku2008-05-18

 耳男と呼ばれる匠は、耳を切り落とされた際、見物していた夜長姫の笑顔が忘れられない。その笑顔に打ち勝つため、蛇の生き血をあおり、小屋の天井に無数の蛇をつるす。頼まれたミロク像ではなく、バケモノの像を彫るためだった。
 近藤ようこの『夜長姫と耳男』(小学館)は、坂口安吾の短編小説を10話からなる漫画にしている。
 疱瘡が流行り、村人たちが大勢死んでいくのを喜んで眺める夜長姫。このままでは村人が全員死んでしまうと恐れた耳男は、ノミで姫の背中を差す。
 息を引き取る間際、姫がつぶやく。
「好きなものは、咒うか、殺すか、争うかしなければならないのよ。おまえのミロクがだめなのもそのせいだし、おまえのバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、今私を殺したように立派な仕事をして…」
  
 

アクセスカウンター