ハプニングは監督の中で想定内ではあったが、実際に誰がどのように動くかなんて演出しきれるはずがない。事件を予想しつつ、流れをコントロールしない。だからこそ映像に臨場感が増す。
(松江哲明『セルフ・ドキュメンタリー』河出書房新社)
ドキュメンタリー作家・松江の方法論には、AVの撮影体験も大きく影響している。
AVは準備を徹底するからこそ、現場で壊すことができるし、生なリアクションを大事にできる。
準備もなしに破壊が行なわれても、緊迫感はない。さりとて、準備どおりに事が落ち着いてしまっても、面白くはない。
均衡が壊れたときに、ドラマが誕生する。