希望の心得


 未来社を経て、影書房を設立した編集者の松本昌次は、現代の出版界を危惧する。

 変な希望は持たないほうがいいというのは、たとえばわたしが十代だった戦争中の経験でもあるんです。その時代は、まちがってはいたけれど、少なくとも希望を持っていたわけです。その希望が怖いんですよ。戦争中、わたしたち日本人は、実はアジア諸国を侵略しながら、「大東亜共栄圏」などという夢を持っていたんです。だから希望というのはどちらに転ぶか、わからないんですよ。

(松本昌次、聞き手:上野 明雄・鷲尾 賢也『わたしの戦後出版史』トランスビュー


 希望を持たねば、やっていけないが、希望におぼれることは、避けなければならない。

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