人間も世界も

 既成作品の成功を真似てうまく書こうとするからつまらないものにしかならない。小説のおもしろさは、うまさや完成度にあるのではなく、不器用さや不格好さにあり、そこに作者の試行錯誤の痕跡がある。試行錯誤とは楽観的思考の形跡のことであり、芸術のその楽観的思考が、人間や世界を肯定するのだと私は信じる。(保坂和志「岩を登ったのは」『日本経済新聞』3月18日夕刊)

 そもそも、人間も世界も、不器用であり、不格好なのだ。

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