誠実な芸人

 正体を知られたことで、人が遠ざかった芸人がいる。村本大輔は逆の存在だろう。誠実で真摯の人柄を知れば、笑いに込められた深さと熱い思いをいっそう実感できる。

『アイ・アム・ア・コメディアン』(日本・韓国、日向史有)は、地上波から消えた彼が、米国や韓国で人と交流したり、コロナ禍の規制に苦しむなか、国内でライブをこなし、実家では別居した父母にだめだしされながらも、自分の流儀を確かめていく。

 一貫しているのは、だれに対しても分け隔てのない態度だ。災害、差別、身内の死。すべてを昇華しての笑いは、弱者蔑視で成り立つゆがんだ笑いとは、性質が異なっている。

           

 

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