他者のとらえ方


 5時間近い大作『ヘヴンズ ストーリー』(日本、瀬々敬久)は、復讐の連鎖といったテーマよりも、他者に対する評価の格差が興味深い。
 ある人にとっては大事な人間が、別の人にとっては単なる罪人だったり、虫けらだったりする。自分と相手との関係次第で、大きな違いが生じるのだ。劇中に登場する大勢の人間に、誤解が生まれたり、殺人が実行されるのも、こうした原理に基づいている。
 両親を殺された少女。妻子を奪われた男。赤の他人を惨殺した青年……。
 誰一人として、他者への見方を変える者はいない。敵は敵であり、味方は味方だという発想を死守するのだ。
 はたして人間は、そういうものなのか。人間をリアルにとらえるとすれば、そこに思いが行くかどうかであろう。



 

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