複雑化の反動


 作品としての出来はともかく、複雑化した時代だからこそ、受けるドラマもある。
 少女漫画が原作の『君に届け』(日本、熊澤尚人)は、純粋な高校生たちの友情と恋愛を徹底してベタに表現することで、観客の涙腺を刺激する映画だ。
 時代が流れても、感情の源泉は、そう簡単に変わるものではない。あるいは、そう思いたい。
 コミュニケーション・ツールが高度化した時代の反動で、そのように考える人間が少なくないことは、確かなようだ。

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