路上の切傷未遂と、異国の紛争。時代も性質も異なる体験に接点があるのか。
山田太一のドラマ『ナイフの行方』(NHK)では、通り魔寸前の青年を老人がかくまったことから、二人で同居するはめになる。
思い付きの善意だけで、結びついたわけではない。老人は、どこまでも懐疑的だ。人は安易に変わらないという経験則がある。
他人は決して理解できない。だからこそ、可能性を信じたいという気持ちもある。人の根底は変わらないが、変わる部分もある。再会した旧友の変化も、老人の意識に影響を及ぼしたのだ。
青年の再起を期して、老人は、ちょっとした策を凝らす。懐疑的な年長者ゆえの、込み入ったたくらみだ。
老人と青年の関係に甘さはないが、世代を超えた希望も見える。