永遠の警鐘


 特攻隊員がどこまで純粋だったかどうかはともかく、純粋であればあるほど、いいように利用されやすいものだ。
 彼らの死に感涙する者ほど、彼らのように死ぬことはない。狡猾でしたかかな分、実に安全に生きている。当事者でないからこそ、死を賛美し、陶酔できるのだ。軍部の政策やジャーナリズムの無理解を批判しても、根本の原因まで糾弾するわけではない。自己陶酔しやすいように、歴史を改変するだけである。
 百田尚樹『永遠の0』(講談社文庫)を読めば、真に警鐘すべき相手は、作中の人物ではなく、人物を操る者自身であることがわかるだろう。いたずらに感動している者は、共犯者にすぎない。
 

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