正しさの圧力


 昨年11月、過去の英字紙で慰安婦問題の報道に関し、「性奴隷」などの表現を使ったとして、『読売新聞』がお詫びを掲載した。
 政府のイデオロギーに追従し、世界のメディアの常識と離脱した同紙。ジャーナリストのマイケル・ペンは、『週刊金曜日』9日掲載のコラムで、政府の政策に合わせ、歴史記録の改ざんに励む対応が、ジョージ・オーウェル1984』の役人を彷彿させるものと、指摘している。
 現在のメディアは、戦中ほどの制裁が課せられているわけではない。にもかかわらず、政府や大衆の一部から発せられた抗議への迎合が、日増しに進んでいる。対象は記事に限らない。音楽やコントでさえ、範疇にある。
 圧力の推進者も支持者も、締め付けに加担しているという自覚はない。正しさを信じているからこそ、なおさら厄介なのである。
 

アクセスカウンター