戦争と日常


 戦時が暗いばかりとは限らない。いつ焼け出され、命を落とすかもしれぬ絶望的な境地は、生活に緊張感を与え、精神を高揚させ、希望さえも育む。戦後世代でも、震災直後の清涼な充実感を否定できまい。
 戦争が続くにしろ、終わるにしろ、日常は、いつ終わるとも知れず、人を陰鬱にし、絶望をもたらすのだ。
『戦争と一人の女』(青林工藝舎)は、坂口安吾のとらえた戦中・戦後の日常が、近藤ようこの漫画を通して、現代を実感させる。

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