フィクションの力


 体面を重んじ、集団自決を回避できない戦時下の男たち。権力に執着せず、生きることに忠実な現代の女たち。
 燐光群『カウラの班長会議』(ザ・スズナリ)は、第2次大戦下のオーストラリアと現在の日本に派生した難題を、異なる時代と性差を舞台上で交差させつつ、今日の我々に突きつける。
 連合軍の収容所から大量脱走する日本の捕虜たち。生きて辱めを受けぬために、あえて銃殺される運命を選んだのだ。
 彼らが死を選ばずに生き続ける道も、あったのではないか。
 そう考えた女性スタッフは、映画に架空の場面を加える。男たちが心の声に耳を傾け、脱走をやめるのだ。
 図式を超えるフィクションの力である。

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