作家の見識

mukuku2007-05-19

R25』(5月17日号)のコラム『空は、今日も、青いか?』を読んで、おやっと思った。筆者の石田衣良憲法について論じているが、「世界にはこれだけ紛争の種が現実としてあるのだから、日本も軍事力を持たないわけにはいかない」「憲法上の解釈でいえば、すでになんでもありである」と言って、既成事実を許容しているのである。
 トレンドに敏感な石田がこうした発言をするのは、どうしたことか。
 改憲国民投票についても、こう語っている。

 防衛庁防衛省に格上げされ、憲法改正が声高に論議され、第二次大戦前のきなくさい空気が漂ってきたという人が多い。けれど、それは今の日本人をあまりに低く評価しすぎているのではないだろうか。手続きが規定されることと、実際の改憲までにはたいへんな距離がある。その過程で日本人の良識が働くだろうと、ぼくは信じているのだ。

 こんなに、国民を信用していいのだろうか。ブレア首相のイラク制裁を明確に批判した英国民とは違い、日本国民は、小泉・安倍路線を事実上支持している。選挙の投票率でさえ、きわめて低い。国民の憲法認識は、実に脆弱である。
 もちろん、この程度のことは、石田ならば認識しているだろう。トレンドであリ続けるゆえに、大衆路線に追従しているのかもしれない。
 大衆の進路が誤らないうちはいい。だが、進路が乱れときには、路線と距離を置くことも、作家の見識ではないだろうか。
 

アクセスカウンター