鬼滅に見えるもの

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(日本、外崎春雄)は、原作やテレビ版を見なくても十分楽しめるだろう。剣士の前に立ちふさがる鬼が何を象徴し、弱さと寿命を自覚しつつ、終わりなき戦いに挑む炭治郎たちが、なぜ現在の観客の心を揺さぶるかは、あえて言うまい。キャラクターの生い立ちは、ありがちなエピソードというよりも、現代人の境遇とつながる部分が根底にあり、決して漫画内の世界で閉じていない。

 弱肉強食の世界で這い上がる者ほど、自身も弱者を見捨てるようになりがちだが、鬼に対峙する炭治郎は、決して弱者を見捨てない。現代の主流派とは異なる態度を貫いている。

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