脱構築


 村上春樹の自伝的エッセイ『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング)は、小説作法の心得であると同時に、生き方の処世本でもある。
 ふとした偶然で手がけることになった職業を、いかに掘り下げ、表現を伝える場を広げたか。実践に裏打ちされた手の内が、惜しげもなく明かされている。
 村上以前の世代が壁にしたものを村上が越えることを可能にしたのは、これまで盲目的に踏襲されていた型を脱却して構築した手法だった。

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