寓話と神話

 寓話と神話との違いは何か? 寓話は継承の組み替えというレベルで完結してしまうが、神話は人の心の「元型」に結びついている。寓話は頭で理解するものだが、元型は心をすっぽりとあてはめるものである。そこには理解を必要とされない。……チャンドラーの作品が半世紀以上を経てもなお熱心に、世界中で読み続けられているのは、その「元型」が今でもなお、人々の心に強く訴えかけるだけの説得力と機能性を維持し続けているからに他ならない。(チャンドラー『大いなる眠り』ハヤカワ文庫――訳者:村上春樹の解説より)


 ここでの実作論が村上自身の姿勢を語っているのは言うまでもないが、すべての普遍的な作品に当てはまる傾向でもある。
 ただ物語があるわけではない。形式だけがあるわけでもない。背後には、特定の時代や世界を超えた何かがあるはずなのだ。

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