失敗という素材

 信頼する恩人でもあるので、「自分で映画を撮ったり出演したりする依頼がきているんですけど、作家がそんなことをしてもいいのでしょうか?」と相談したの。すると伊藤さんは、「何を言うの、石原くん。君は今とってもおもしろいところにいるんだよ。何をやったっていい。失敗してもいいからやりなさい」と言うんです。「失敗してもいいんですか」と訊いたら、「失敗したら、その失敗を書けばいいじゃないか。君は小説家なんだから」と言ってくれた。いろんな人から忠告は受けたけれど、こんなしたたかなアドバイスをしてくれた人は、伊藤整さんだけでした」(石原慎太郎「直撃! 政界のドンは不遇な作家?」『婦人公論』7月22日号) 


 作家にとって、すべての経験が材料である。

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