名匠の冒険


 今日において言いたいこと、手法としてできること……。映画でできることは多様だが、すべてを詰め込めばいいというわけではない。あるいは、協力者全員に配慮すればいいというわけではない。
 映画の出来を問うならば、以上のような自覚が必要だが、そのことを踏まえつつも、あえて作られたのが、『野のなななのか』(日本、大林宣彦)であろう。老人の悲恋を中心にしつつ、親族それぞれの世代感覚や、戦中・戦後の社会問題にダイレクトな主張を込めている。
 三時間近い上映時間を短いと思わせる内容ではなく、試みも成功しているとは言い難いが、名匠があえて冒険をしたとすれば、決して否定すべき作品ではないのかもしれない。

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