接近する小説

平野 僕が思い描いている小説的なるものの話をすると、一個人から始まって、どこかで一般性や普遍性、つまり赤の他人であるにもかかわらず、読者がなぜか共感してしまうというところに向かって開かれていかないと、小説にならないと思うんですね。自分から遠い他者の話から始まって、ときに反感さえ抱いたけれども、最後は価値観も変わって一つの人間の姿を見たという満足を得る。(平野啓一郎談「創作合評」『群像』5月号)

 海外の作品であれ、古典であれ、優れた文学は、遠くにあるようで、極めて近い位置にある。

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