舞台が米国最大の音楽フェスティバルとはいえ、あるいは、ルイ・アームストロング、セロニアス・モンク、チャック・ベリー、マヘリア・ジャクソンなど、伝説のミュージシャンが勢ぞろいしたとはいえ、それだけならば、あまたある音楽映像の一つにおさまるだけだろう。『真夏の夜のジャズ』(1959年、米国、バート・スターン)の水準が異なるのは、ミュージシャンの汗や表情とともに、観客のファッションや海の風景など、一場面ごとに斬新な映像が織り込まれていることだ。すぐれた演奏同様、繰り返し上映されるだけの気持ちよさがある。