再放送された山田太一の連続ドラマ『それぞれの秋』(BS- TBS)は、父が脳腫瘍に倒れたことで、バラバラだった家族が、寄り添うようになる。
語り手の次男をはじめ、それぞれに二面性があるが、犯罪を起こすほどのふてぶてしさはない。弱さゆえに本音に徹することはできないが、弱さゆえにギリギリのところで踏みとどまる節度がある。
クライマックスに家族のそれぞれが食卓で秘密を打ち明けるが、お互いを受け入れ、元通りの生活に戻る。心の内には、多少のしこりが残るだろうが、それで関係を断ち切るわけではない。それが小市民の知恵であり、現実なのだ。
家族は、他人であっても、家族として生きていける。悲喜劇の背後には、現在を決して投げ捨てないという意志があり、人生は続くという希望がある。