作家の家族


 認知症の母と二人っきりで過ごすならば、とうに気が滅入っているだろうが、『わが母の記』(日本、原田眞人)の作家は、世話を妹夫婦に任せ、母と一緒の時間は少ない。従順な妻や個性豊かな三人の娘の存在も、彼に題材を与えたり、執筆の専念に貢献している。
 幼少期、母と離れて妾の家で暮らした日々は、さびしいものだったが、多彩な家族に囲まれての後半生は、決して不幸ではなかった。そのように感じさせる群像劇である。

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