生きものたちは都会を目指す

mukuku2007-06-03

 近年のタイでは、都会で暴れる象が多いという。村で暮らせなくなって、バンコクなどに出稼ぎに来た象だ。(東川光二「どこで生きればいいのか」『週刊金曜日』6月1日号)

 ……自分が食べる餌を買ってもらうため、バナナやサトウキビを積んで夜の繁華街を売り歩く。いくら調教しているとはいえ、象にはとてつもないストレスである。ときには車と衝突したり、電線に絡まった蔦を食べようとして感電し、命を落としたりするのだ。
 大都会を彷徨う彼らの現実は、切迫した社会問題となっているが、その背景には国内の緑化政策(森が切り開かれ、象が食べないユーカリの木が植林されるなど)や、国際的な野生動物保護政策(象の捕獲や輸出禁止など)の矛盾が横たわっている。 

 日本では、食べ物がなくなって熊が人里まで下りてくることがあるが、人里で暴れる生きものは、熊だけではない。彼らは、飢えをしのぐために、不慣れな地を徘徊する。
 商店街・住宅地・学校……。その生きものは、なにかを求めてうろつき、衝動的に暴れる。ペットのようにおとなしくなれないし、エネルギーを生産的に使うとは限らない。しかも、命を落とすのは彼らばかりではない。彼らに殺されるものもいる。
 緑が日増しに減っていく。ビルやマンションなどが次々と立って、視界を狭める。都会の躍進は、生きものの暴力を抑える環境から、かけ離れていくだけである。

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