スピルバーグのオリジナル映画があり、ブロードウェイのミュージカルを経て、両者を融合させたリメイク版『カラー・パープル』(米国、ブリッツ・バザウーレ)は、より洗練され、普遍的な物語になっている。
20世紀初頭の黒人社会で虐げられた女たち。自分が自分であるための生き方を見出す物語の傍らに、改心して許される男やアフリカの紛争もある。今日的なメッセージを帯びているのは言うまでもない。
既成の価値観、因習に縛られずにすむのは、人工的に作られた人間だろう。『哀れなるものたち』(英国、ヨルゴス・ランティモス)のベラは、赤ん坊の脳を埋め込まれた人間故に、これまでの女性とは異なるタイプの人間として生まれ変わった。経験し、学ぶことによって、彼女は、自分ならではの人間になる。
ベラ的な性格を持つ人間が、この世にいないわけではない。本作が人間の可能性を広げられるかどうか。